BG学園物語 



 <5月





〜 放課後 〜

= 1・応援団 = 

校内の一画、とある部室のうららかな午後。 窓から一筋の煙が晴れた空にのぼってゆく。
至福の表情を浮かべて一人悦に入っているのは、数少ない女性生徒のふう。である。
陽だまりの中で美味しいコーヒーお茶にお菓子、そして誰がなんと言おうとタバコで一服、これぞ至福のひととき。
はぁ〜・・・し・あ・わ・せ♪
「そう堂々と吸われると、先生方も文句の言いようがないね」
「・・・って言いながら、ゆうちょさんも吸ってるじゃないですか☆」
「そりゃーオレだってヤニ〜ズですからw」
ぷはぁ〜☆
・・・と二人が悦に入っているところへ、賑やかな足音が聞こえてきた。
誰かな?と思う間もなく、勢いよくドアが開かれる。
「押忍! 今日は天気がいいので、外で発声練習ぅ〜・・・と、こらっ、そこの二人!」
「「押忍! 今日も天気が良いので、練習前に一服している次第であります! 団長もいかがですか!」」

そういうことをドア全開にしてて、大声で言っちゃぁダメでしょ。
・・・という至極まともな突っ込みをする者は、残念ながらこの部屋にはおりませんw

先月7番コースで一躍有名になった団長B.Rは、テーブルにあるお菓子を目ざとく見つけて一口放り込むと、懐から愛用のタバコを取り出した。
三人窓辺に並んで一服している姿はなかなかに面白いものだが、これがこの部屋でのいつもの風景だった。



ここはBG学園応援団。・・・彼ら三名で、隠れヤニ同好会も兼ねていると知る者は少ない。



練習で大声を張り上げる、という事情から、この部屋は校舎から一番離れた場所に位置づけられている。そのため、生徒指導である魔王様の目も届かないというわけだ。
見つかったら最後、応援団室は職員室近くへ強制送還させられるであろう。
他にも団員は多数いるのだが、全員他の部とかけもちしており、イベント前などでもない限り集合することはない。
よーするに、平時はこの三人で結構好き勝手やっているというわけである。

「最後の一個、ゲットです!」
「「あっ!」」
お菓子争奪戦、最速はふう。団員に決定☆
悔しがった二人だったが、団長の視線がふっと緩んだ。
「今更だけど・・・」
B.Rは改めて二人を見直し、苦笑いする。
「応援団はどうして食べすぎな顔ぶればかりなのかなぁ」
その呟きを聞いた二人も、思わず笑いがこぼれた。残念ながら反論できない、という表情である。

ふう。は美味しいもの、美味しいお店には目がない。
また「甘いモノは別腹♪」を地で行く性分で、新しくできたカフェやレストラン、ケーキショップなどでは、必ず一度は彼女の姿を見かけることができる。
一方、「その小柄な身体のどこに入るんだ!?」といつも周囲から言われるのがゆうちょである。
B.Rの食べっぷりも有名だが、彼に対抗できるのはおそらくゆうちょを含めたごく数名程度というもっぱらの噂だ。
ド○キーでは400gライス大盛り、ポテト、パフェまでさらっと平らげてしまう胃袋。
・・・それがまさしくノンフィクションであることを、こんなところに暴露してしまう作者である。(待てw)

「よーし、一服したら来月のイベントに向けてちょっと練習するか〜」
白いハチマキをキリリと締めて、マジメな表情で気合を入れるB.R。
このまま話が終わってしまっては、応援団の存在自体がただのコメディと思われてしまうではないか。
と こ ろ が。
「あ、俺そろそろ帰宅部のほうに行かなきゃ☆」
「わたしも北区のほうで集会が〜w」

・・・ぶちっ

「サボルだけなのに『キタク』『キタク』ってハモるなよ!」



・・・そんなのんきな部屋の、開け放たれた窓から、風に乗って何やら音が聞こえてくる。
「軽音、今日は外でやってるんだねぇ」
気づいたゆうちょが窓から身を乗り出して、本校舎の屋上を見上げた。
文字通り、雲ひとつない晴天。
グラウンドからのエンジンの音に負けないくらい、彼らの音楽は初夏の空に響き渡っていた。





>>屋上で奏でる彼らの音とは・・・



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