BG学園物語 



 <午後 3





〜5月〜

今年のGWは、箱根に遠足だ!

―――というわけで3Gの生徒一同は、各々の車で箱根を目指して走っている。



BG学園の遠足は、一泊二日が基本スタイル。向こうでは夜も走りたいという人も絶対いるので、最初から二日で行事日程組んでいるのだ。
もちろん学園全部で行動してしまうと車が何百台にもなってしまう。
箱根で渋滞を起こしても意味がないので、この行事はクラス別で毎年行われるのだった。

そして、今日はいよいよ3Gの遠足当日である。
全員が縦に連なって走るわけにもいかないので、担任RINKA♪は当日の朝HRで「現地集合ね」って言ってさっさと出発してしまった。
そんな担任だったが、それを無責任だというツッコミはさすがになかった。
現地到着までは軽く数時間はかかる。ただでさえやかましい3Gの面々全員を引率するなんて、確かに誰だって遠慮したい。
出発間際、
「あ! 現地までの競争は禁止ですからね。行き先は箱根であってケイサツじゃありませんから」
という副担任兼理事長の心温まる挨拶を受けて、みんな各々の車に乗り込みはじめた。
「お前のことだろ」
「いや、絶対お前のことだって」
トリックマスターと7.9がお互いにそんなことを言い合ってるうちに、同級生たちは次々と出発していく。
はたと気付くと二台の車だけがぽつんとグラウンドに残されており、二人はあわてて愛車に乗り込んで、お互い負けないとばかりにアクセルを踏んだ。
(山道愛好会会長の名において、箱根に行くのに負けるわけには!)
(いつも居眠りばっかしてる俺だって、やる時ゃやるぜ!)
つい今しがたの注意を、早くも忘れてる二人であった。



午後5時。
「点呼とるぞー! 全員いるかー?」
副担任メカドック2は、集合場所で集まった顔ぶれを見回した。
充分過ぎるほどの時間を取ったので、事故でもない限り遅刻はありえない・・・はず。
「せんせー! 7.9とトリックマスターがいないで〜す」
「・・・がっくり。作者が作者だからそんな気がしたんだよなぁ・・・誰か携帯わかる人いたらかけてみてー」
「今電話してまーす。なんとかつながりそう・・・あ、もしもし!もう点呼始まってるぜ。今どのへんにいる・・・・・・・・・・・・はぁ!?」
その大声に同級生の注目を一身に浴びたIIVは、携帯をかざして向こうにも丸聞こえの状態のまま、一同に爆弾発言を投げつけた。
おかしいやら呆れてるやら、なんとも複雑な表情である。
「二人でどうやら道を間違ったらしくて、今琵琶湖だそうで〜す」
「・・・琵琶湖ぉ?」
全員唖然とし、次の瞬間爆笑が沸き起こった。何をどう間違えたらそんな検討違いの場所に辿りつくのだろう。
受話器の向こうから怒声やら罵声やらが返ってくる。「お前何みんなにバラしてるんだー!」ということらしいが、時すでに遅し。
爆笑の渦の中、担任と副担任だけは肩を落としていた。そうして二人とも同じ仕草で頭をかく。
迎えに行ったものか、そのまま放置しておくか、これからこっちに呼び寄せるか・・・そう悩んでるに違いなかった。
しばらく考え込んで、RINKA♪は急にサバサバした表情で、携帯に向かって話し始めた。
「しゃーないですね。そのままそっち走って、あとで二人で仲良くレポ出してください。それで一応出席扱いにしてあげますから」
『RINKA♪センセー、トリックマスターです〜。今からでもそっち行きたいです〜』
「着いたら朝になるでしょう。ソコ走るの飽きたらさっさと学園に戻ってなさい」
『ガーン! オレの箱根〜〜〜』
「はい、もったいないから電話切って切って」
『せんせーそれ冷たすぎっす! 自分曲がりなりにも山道愛好会なんで、多少無理してでもこれからそっ・・・』

プッ☆

明らかに話の途中で、容赦なく通話を切ってしまう。
鬼だ、と等しく思った生徒たちに向かって、担任は明るく告げた。
「さー、気が済むまで走りましょ! 疲れた人は一応旅館の大部屋を一つとってあるので、各自適当に休むこと。んじゃとりあえず解・散☆」
わっと歓声が上がり、全員我先とばかりに車に乗り込む。
「対向車にはくれぐれも注意して、地元の方々へ絶対迷惑はかけちゃいけませんからね! 琵琶湖に送りますからねー!」
どっと笑い声が響き、かくして箱根の夜は更けてゆくのであった。





―――遠足の休み明け。
3年G組の教室は、この上なくヘコんでいる7.9とトリックマスターを囲んで、わいのわいのと大騒ぎであった。
中には少々(?)意地悪なクラスメートもいて、わざわざ仏頂面の二人の前で、箱根のどこのコーナーがあーだこーだと話に興じる始末。こうなるとたまったものではない。
結局二人は、立ち直るのに一週間以上も費やす羽目になった。
しかし、立ち直るや否や。
(来年は絶対覚えてろよ! 絶対オレが箱根で最速だ!)
(次に箱根に行くときは、愛好会会長の名において全部一番で制覇してみせる!)
と、やっぱり懲りていない二人であった。





当然のことだが、次回の遠足が箱根とは誰も言っていない。
遠足の行き先が決まるのは、新しい年度になってからすぐのこと。

気合満点の二人がそのことに気付く頃には、きっと来年の桜が綺麗に咲いてることであろう。





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